英語を勉強し始めた頃は、練習すれば、その分だけできることが増えていった。ところが、ある程度分かるようになってから、なかなか伸びを感じられない。
そんな「中級の壁」に悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。
初級の頃も、もちろん練習は必要です。ただ、基礎をしっかり練習すると、成果を感じやすい面があります。中級から先は、同じようにはいかないことが多い。今日は、私自身の経験を振り返りながら、その理由と、どう付き合っていけばよいのかを考えてみたいと思います。
私が中級を越えたのは、「英語で学ぶ」ようになってから
最初に、少し拍子抜けするような話をします。私は、中級の壁を越えるために、特別な練習を頑張ったわけではありません。
大学に行ったことで、自然と英語が伸びた、という感覚なのです。
ただ、何もしなかったという意味ではありません。大学の授業は容赦がありませんし、宿題もたくさんあります。英語を使って学び、その課題に取り組んでいるうちに、英語に触れる量が増えていました。
「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」へ。この変化は、大きかったのではないかと思っています。
語学留学中に周りを見ていても、ESLの学校で英語を学び続けた人より、普通の大学に移った人の方が、ずいぶん早く上達していると感じました。
それが、触れる英語の質や種類の違いだったのか、量の違いだったのかは、正直よく分かりません。授業の時間は同じくらいでも、大学では課題に追われます。私が見ていたESLの環境では、宿題が少なかったり、出ても取り組まない人がいたりしました。授業以外も含めると、量や取り組み方には違いがあったのかもしれません。
これは私自身と周りを見てきた実感で、どの学校でも、誰にでも同じことが起きるという話ではありません。ただ、英語で何かを学ぶ生活が、私の英語を伸ばしてくれたのだと思っています。
初級でうまくいった勉強を、そのまま続けていませんか
初級の頃は、限られた範囲をしっかり理解し、何度も練習する。「狭く深く」の勉強が役立ちます。
それで伸びると、「このやり方が正しいんだ」という成功体験ができますよね。だから、中級になっても、同じように狭い範囲を繰り返し掘り下げたくなります。
でも、中級から上級へ進もうとすると、扱う英語の範囲がぐっと広がります。話題もジャンルも増えますし、必要になる単語や表現も増えていきます。
同じ勉強法を続けているうちに、英語学習への熱が少し落ち着いてきたり、「まあ、これくらいでいいか」という慣れが出てきたりすることもあります。必要な範囲は広がっているのに、英語に触れる時間はあまり増えていない。そんなこともあるのではないでしょうか。
覚えた英語に出会い直すことと、素早く処理すること
中級では、なぜたくさんの英語に触れることが大切なのか。単語一つを考えても、初級の頃とは事情が違います。
初級で習う頻度の高い単語は、いろいろなところに出てきます。何度も出会うので、意識しなくても復習する機会があります。
ところが、中級で覚える単語や表現には、それほど頻繁には出てこないものもあります。せっかく覚えたのに、次に出会うまでに忘れてしまう。覚えては忘れ、また覚えては忘れ、となりやすいのです。
そうした言葉に何度も出会うためには、それだけ多くの英語に触れる必要があります。
もう一つは、知っている英語を、いちいち考え込まずに処理できるようになること。いわゆる「自動化」です。
単語や文法を知っていても、一つひとつ時間をかけて考えていたら、流れていく英語についていくのは大変です。新しい知識を増やすだけでなく、知っていることを素早く使えるようにする。そのためにも、英語に繰り返し触れることが大事だと私は考えています。
「全部分かってから次へ」を、少し手放す
中級以上の方には、とにかく英語に触れる時間を増やしてほしい。これは、声を大にしてお伝えしたいことです。
テレビでも、YouTubeでも、ドラマでも、映画でも、本でもいい。エプラなら、今あるライブレッスンに全部出るくらいの気持ちでもよいと思います。それだけで十分というより、さらに日常でも英語に触れる機会を作ってほしいのです。
そのとき、「これは効率が悪そう」「このジャンルには興味がない」と、選り好みをしすぎないことも大切だと思っています。扱う範囲を広げたいのに、いつも同じ狭い範囲にとどまっていたら、出会う英語も限られてしまいます。
そして、多少分からないことがあっても、全部を理解しようと立ち止まらず、分からないまま先に進むこと。
まじめに勉強してきた方ほど、これは気持ちが悪いかもしれません。でも、量に触れるためには、分からないものを、分からないまま流す努力も必要なのです。
細かく確認する練習を全部やめるということではありません。ただ、そればかりに時間を使ってしまわないようにしたいですね。
英語以外に興味のあることや、勉強したいことを、英語で学んでみる。そんなふうに、英語の勉強時間だけでなく、ほかのことをしている時間にも英語を取り入れていくことが、一つの方法になると思います。
では、日本でそんなにたくさんの英語に触れられるのでしょうか
ここまで書いて、「それはそうかもしれないけれど、日本で生活しながらできるの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。
私が大学で経験した英語の量は、おそらく、多くの方が「たくさん勉強する」と聞いて想像する量より、ずっと多いと思います。
私の感覚では、英語を母語とする人が英語で生活しているくらい、日々たくさんの英語に触れ、それを3年、4年、5年と続けるようなイメージです。もちろん、これは私の経験からの感覚で、上級になるために誰もが同じ年数や量を必要とする、という基準ではありません。
ただ、中級から上級への変化は、それくらい大きなものだと感じているのです。
一方で、初級の頃のように集中して細かく勉強する方法は、一日に何時間も何時間も続けられるものではありません。その方法だけで必要な量を確保しようとするのは、相当に難しいと思います。
では、無理をしてでも、死ぬほど頑張ってくださいと言いたいのか。そうではありません。仕事も生活もありますし、現実的に無理なこともあります。
できる範囲で続けるしかない。でも、その範囲がとても限られていたら、望むような大きな上達は難しいかもしれない。ここは、私も簡単に答えを出せないところです。
私も、プロのピアニストのように弾きたいです
少し話は変わりますが、私はピアノを練習しています。
自分では、まだ中途半端な上手さだなと思います。もちろん、プロのピアニストのように弾けるようになりたいです。
でも、そのために毎日5時間練習してくださいと言われたら、無理です。正直、嫌ですし、やりたくありません。
それでも、プロのように弾きたいという気持ちは、持っていてもいいと思うのです。ただ、今の生活の中で現実的に目指す目標というより、憧れとして大切にしておく。
そして、今できることをコツコツ続けて、ちょっとでも上達したら喜ぶ。それが、私にとっては現実的な付き合い方なのかなと思っています。
英語も、似たところがあるのではないでしょうか。
ネイティブのように話したい。その気持ちはあっていい。でも、日本で暮らしている自分に、本当にそこまでの英語力が必要なのか。そのために、どこまで時間や労力を使いたいのか。そこは、一度考えてみてもよいと思います。
好きなこと、楽しいことだけをしていれば、どこまでも上達するとは言えません。上達には練習が必要ですし、大きく伸びたければ、それに見合う取り組みも必要でしょう。
けれど、憧れのところまで行けないからといって、少しずつ上手になる喜びまで手放さなくてもいいのですよね。
すっきりした解決策は、まだありませんが
「これをすれば中級の壁を越えられます!」という、すっきりした解決策をお渡しできなくて、ごめんなさい。
英語に触れる量は増やしてほしい。でも、無理をして生活を全部英語に捧げてほしいわけではない。憧れは持ち続けてほしいし、今の自分の小さな上達も喜んでほしい。
その折り合いをどうつけるかは、私も一緒に考えていきたいと思っています。
今の生活の中で、もう少し英語に触れられるところはないか。続けてきた勉強を、少し変えてみられないか。そして、前よりできるようになったことを、見落としていないか。
私も一緒に悩みます。すぐに答えが出なくても、自分にできることを探しながら、一緒に続けていきましょう。

